Society学会概要

History沿革

歴代理事長

初代理事長 猪 初男
初代理事長猪 初男
第2代理事長 岡本 健
第2代理事長岡本 健
第3代理事長 山下 敏夫
第3代理事長山下 敏夫
第4代理事長 吉原 俊雄
第4代理事長吉原 俊雄
第5代理事長 三輪 高喜
第5代理事長三輪 高喜
第6代理事長 岩井 大
第6代理事長岩井 大
 
 

耳鼻咽喉科の専門領域は従来、耳・鼻・咽喉とされていたが、医学会全体の専門化が進み、それぞれの領域に関してさらに専門的研究が行われるようになった。このような流れにあって、扁桃に関する研究も、その免疫機能、病巣感染、扁摘の適応等に専門領域が広げられた。まず昭和38年(1963)第1回の扁桃研究会が開かれ、当初は年2回、のち昭和40年(1965)より年1回の開催となった。それまでの研究の成果は国際的にも認められ、昭和62年(1978)International Symposium on Tonsil(国際扁桃シンポジウム)が野坂保次会長のもと国立京都国際会館で行われ、さらに第3回国際扁桃シンポジウムは形浦昭克会長のもとで平成7年(1995)札幌市トマムにおいて開催された。

当時の日本耳鼻咽喉科学会(現:日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会)では、関連する学会として口腔・咽頭科学会を設立する案があり、扁桃研究会としてこの問題を検討することとなった。その結果、昭和62年(1987)口腔・咽頭科学会を設立するに至った。 名称として日本口腔・咽頭科学会(Japan Society of Stomato-pharyngology)が正式に決定され、発足記念シンポジウムが昭和63年(1988)冨田 寛会長のもとで東京の日大会館で開催された。日本扁桃研究会はその後も毎年引続き開催されていたが、平成4年(1992)日本口腔・咽頭科学会と日本扁桃研究会が岡山で増田 游会長の下に同時開催され、翌年、平成5年(1993)両者の統合が行われ(表1)、初代理事長として猪 初男新潟大学名誉教授(添付写真)が就任された。その後、歴代の理事長のもと(表2)、学会誌を年に3回刊行し、口腔咽頭科領域の進歩に務めている。

これまでの研究会、学会の詳細な経過に関しては、日本口腔・咽頭科学会が発刊した岡本 健第2代理事長(添付写真)による「事業報告(1988)」(1)および「日本口腔・咽頭科学会20年のあゆみと将来展望(2008)」(2)と、山下敏夫第3代理事長(添付写真)による「日本口腔・咽頭科学会30年のあゆみ(2018)」(3)がある。また、平成5年(1993)日本扁桃研究会が発刊した「日本扁桃研究会のあゆみ(1993)」(4)、吉原俊雄第4代理事長(添付写真)による「口腔・咽頭科学の重要性」(2017年)(5)にその詳細が記録されているのでご参照願いたい。

さらに、学会誌刊行に加え「口腔咽頭の臨床(1998年)」(6)が日本口腔・咽頭科学会の編集によって出版された。後者は口腔咽頭科学の発展に伴い改定され、第2版(2009)(7)、第3版(2015年)(8)図1)が発刊された。さらに歯科口腔外科との境界領域問題に関する調査が行われ、その結果は小冊子にまとめられた(2009)(9)

口腔咽頭領域の検査法としては、「口腔咽頭疾患の検査法(1997年)」(10)が刊行され、また、疾患の手引きとしては、「味覚障害診療の手引き」(2006年)(11)、「睡眠呼吸障害(いびきと睡眠時無呼吸症候群)診療の手引き」(2006年)(12)が編集された。これら2つの疾患についての手引き/ガイドラインは、この領域での新たな進展や知見を加え、近く「成人睡眠時無呼吸診療の手引き(仮称)」、「味覚障害検査の手引き(仮称)」としてまとめられ、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会での専功医用テキストとしても用いられる予定である。
さらに、扁桃研究会の流れを引く当学会から、「扁桃病巣疾患診療の手引き」(2023年)(13)図2)が発刊され、長年にわたる扁桃病巣研究がまとめられ、その機序や他疾患とのかかわりが記された。

耳鼻咽喉科頭頸部外科学領域のうち、口腔咽頭科学の領域は、扁桃、味覚、咀嚼、構音、嚥下、唾液腺、口腔乾燥、いびき・睡眠時呼吸障害、咽喉頭異常感、舌、口腔・咽頭・唾液腺、腫瘍・炎症・感染・膿瘍、口腔アレルギーを含めた自己免疫など多岐に渡る。最近ではIgG4関連疾患、Covid-19の後遺症に関連する味覚障害や上咽頭擦過療法、扁桃におけるヒト乳頭腫ウイルス感染、咽頭癌に対するロボット手術、唾石に対する唾液腺内視鏡手術、人口老齢化により増加する嚥下障害や嚥下性肺炎・唾液分泌障害に対する対策、耳下腺手術における持続的顔面神経機能モニター手術、口蓋扁桃やアデノイド手術における手術デバイス、癌に対する免疫治療や、特に唾液腺癌に対する遺伝子変異と個別化治療など、新しい分野での研究が進んできた。三輪高喜第5代理事長(添付写真)のもとでは、特に味覚の分野が発展し、また、時代に合わせ、学会誌のデジタル化や、学会における男女共同参画が進められた。

このように本学会の重要性は一層増加しており、学会員によるさらなる発展が期待される。
これらの方向性を明瞭に示すため、岩井 大第6代理事長(添付写真)が2021年に就任したおり本学会の標語として「口腔・咽頭・唾液腺 ― 口腔に広がる美味に 舌鼓を打ち のど越しを楽しみ 喜びを噛みしめ そして、すやすやと眠る」を提示した。また、睡眠時無呼吸・いびきに対する舌下神経電気刺激療法の紹介と普及に努めた。人口高齢化の中にあって、健康寿命をいかに維持するかは古くて新しい命題である。

日本口腔・咽頭科学会総会・学術講演会は、毎年9月に行われ、開催地は日本全国に渡り(表1)、文字通り全国の秋の味覚を楽しみながら口腔咽頭科学を議論する場となる。本学会と日本の口腔咽頭科学の発展のためには多くの先生方の学会参加が望まれるものである。興味を持たれる先生方のご支援とご入会を心よりお待ち申し上げる。
(加筆中)

(表1)日本扁桃研究会・日本口腔・咽頭科学会開催一覧
回数 開催日程 総会会長名(所属) 学会名
1 1963年4月1日 山本常市(昭和大) 日本扁桃研究会
2 1963年10月25日 斉藤英雄(日本大) 日本扁桃研究会
3 1964年5月5日~6日 白川吾一郎(徳島大) 日本扁桃研究会
4 1964年9月22日 野坂保次(熊本大) 日本扁桃研究会
5 1965年5月23日 片桐圭一(東北大) 日本扁桃研究会
6 1966年9月22日 浜谷松夫(札幌医大) 日本扁桃研究会
7 1967年9月21日 高須照男(名古屋市大) 日本扁桃研究会
8 1968年10月18日 堀口申作(東京医歯大) 日本扁桃研究会
9 1969年10月10日 鈴木篤郎(信州大) 日本扁桃研究会
10 1970年10月1日 武田一雄(大阪医大) 日本扁桃研究会
11 1971年9月24日 斉藤英雄(日本大) 日本扁桃研究会
12 1972年11月9日 野坂保次(熊本大) 日本扁桃研究会
13 1973年10月11日 白岩俊雄(東京医大) 日本扁桃研究会
14 1974年9月6日 粟田口省吾(弘前大) 日本扁桃研究会
15 1975年10月5日 猪 初男(新潟大) 日本扁桃研究会
16 1976年9月24日 斉藤成司(慶応大) 日本扁桃研究会
17 1977年11月24日 熊澤忠躬(関西医大) 日本扁桃研究会
18 1978年10月8日 梅田良三(金沢大) 日本扁桃研究会
19 1979年11月8日 石井英男(群馬大) 日本扁桃研究会
20 1980年11月6日 金子敏郎(千葉大) 日本扁桃研究会
21 1981年9月18日 形浦昭克(札幌医大) 日本扁桃研究会
22 1982年11月4日 竹田千里(東京医大) 日本扁桃研究会
23 1983年11月17日 田端敏秀(和歌山医大) 日本扁桃研究会
24 1984年11月8日 荒牧 元(東京女子医大) 日本扁桃研究会
25 1985年11月7日 岡本 健(産業医大) 日本扁桃研究会
26 1986年11月12日~13日 菊池恭三(日本大) 日本扁桃研究会
27 1987年10月7日 本庄 巖(京都大) 日本扁桃研究会
28
1
1988年11月10日
1988年9月3日
原田康夫(広島大)
冨田 寛(日本大)
上段:日本扁桃研究会
下段:日本口腔・咽頭科学会(※1)
29
2
1989年10月6日~7日
1989年9月1日~2日
西村忠郎(保健衛生大)
熊澤忠躬(関西医大)
上段:日本扁桃研究会
下段:日本口腔・咽頭科学会
30
3
1990年9月26日
1990年9月8日~9日
川端五十鈴(埼玉医大)
金子敏郎(千葉大)
上段:日本扁桃研究会
下段:日本口腔・咽頭科学会
31
4
1991年8月30日
1991年8月31日~9月1日
高橋宏明(大阪医大)
本庄 巖(京都大)
上段:日本扁桃研究会
下段:日本口腔・咽頭科学会
32
1992年9月24日
1992年9月25日~26日
増田 游(岡山大)
同上
上段:日本扁桃研究会   (※2)
下段:日本口腔・咽頭科学会
6 1993年9月2日~4日 形浦昭克(札幌医大) 日本口腔・咽頭科学会
7 1994年9月21日~23日 馬場駿吉(名古屋市大) 日本口腔・咽頭科学会
8 1995年9月21日~23日 茂木五郎(大分医大) 日本口腔・咽頭科学会
9 1996年9月12日~14日 野田 寛(琉球大) 日本口腔・咽頭科学会
10 1997年9月18日~20日 今野昭義(千葉大) 日本口腔・咽頭科学会
11 1998年9月17日~19日 村上 泰(京都府立医大) 日本口腔・咽頭科学会
12 1999年10月28日~30日 高坂知節(東北大) 日本口腔・咽頭科学会
13 2000年9月9日~10日 西村忠郎(保健衛生大第2病院) 日本口腔・咽頭科学会
14 2001年9月14日~15日 荒牧 元(東京女子医大第2病院) 日本口腔・咽頭科学会
15 2002年9月14日~15日 友田幸一(金沢医大) 日本口腔・咽頭科学会
16 2003年9月12日~13日 木田亮紀(日本大) 日本口腔・咽頭科学会
17 2004年9月10日~11日 阪上雅史(兵庫医大) 日本口腔・咽頭科学会
18 2005年9月9日~10日 原渕保明(旭川医大) 日本口腔・咽頭科学会
19 2006年9月7日~8日 吉原俊雄(東京女子医大) 日本口腔・咽頭科学会
20 2007年9月6日~7日 村上信五(名古屋市大) 日本口腔・咽頭科学会
21 2008年9月11日~12日 黒野祐一(鹿児島大) 日本口腔・咽頭科学会
22 2009年9月10日~11日 山中 昇(和歌山医大) 日本口腔・咽頭科学会
23 2010年9月16日~17日 池田 稔(日本大) 日本口腔・咽頭科学会
24 2011年9月8日~9日 平川勝洋(広島大) 日本口腔・咽頭科学会
25 2012年9月13日~14日 湯本英二(熊本大) 日本口腔・咽頭科学会
26 2013年9月12日~13日 内藤健晴(藤田保健衛生大) 日本口腔・咽頭科学会
27 2014年9月11日~12日 氷見徹夫(札幌医大) 日本口腔・咽頭科学会
28 2015年9月10日~11日 河田 了(大阪医大) 日本口腔・咽頭科学会
29 2016年9月8日~9日 川内秀之(島根大) 日本口腔・咽頭科学会
30 2017年9月7日~8日 三輪高喜(金沢医大) 日本口腔・咽頭科学会
31 2018年9月13日~14日 中田誠一(藤田保健衛生大坂文種報德會病院) 日本口腔・咽頭科学会
32 2019年9月12日~13日 鈴木正志(大分大) 日本口腔・咽頭科学会
33 2020年9月3日~4日 香取幸夫(東北大) 日本口腔・咽頭科学会
34 2021年9月2日~3日 岩井 大(関西医大) 日本口腔・咽頭科学会
35 2022年9月8日~9日 原 浩貴(川崎医大) 日本口腔・咽頭科学会
36 2023年9月14日~15日 兵頭政光(高知大) 日本口腔・咽頭科学会

※1 1988年9月3日開催の日本大学会館での発足記念シンポジウムをもって日本口腔・咽頭科学会が設立

※2 第32回日本扁桃研究会をもって、日本扁桃研究会は日本口腔・咽頭科学会と合併

(表2)歴代理事長在任期間
氏名 在任期間
初代 猪 初男 1988年9月3日~1994年9月22日
第2代 岡本 健 1994年9月22日~2003年9月12日
第3代 山下敏夫 2003年9月12日~2009年9月10日
第4代 吉原俊雄 2009年9月10日~2018年9月13日
第5代 三輪高喜 2018年9月13日~2021年9月2日
第6代 岩井大 2021年9月3日~2024年9月5日

(図1)表紙:口腔咽頭の臨床第3版

口腔咽頭の臨床第3版

(図2)表紙:扁桃病巣疾患診療の手引き

扁桃病巣疾患診療の手引き

文献
1)事務報告.岡本 健.口咽科 1988, 1, 111-112.
2)日本口腔・咽頭科学会20年のあゆみと将来展望.記念講演. 岡本 健.口咽科 2008, 20, 157-166.
3)日本口腔・咽頭科学会30年のあゆみ.30周年記念講演. 山下敏夫.口咽科 2018, 31, 1-6.
4)日本扁桃研究会のあゆみ.形浦昭克編.札幌,日本扁桃研究会記念誌編集委員会;1993.
5)口腔・咽頭科学の重要性.理事長講演. 特別寄稿。吉原俊雄。口咽科 2017, 30, 1-4.
6)口腔咽頭の臨床.日本口腔・咽頭科学会編,第1版. 東京,医学書院;1998.
7)口腔咽頭の臨床.日本口腔・咽頭科学会編,第2版. 東京,医学書院;2009.
8)口腔咽頭の臨床.日本口腔・咽頭科学会編,第3版. 東京,医学書院;2015.
9)歯科口腔外科との境界領域問題に関する調査.日本口腔・咽頭科学会境界領域問題委員会報告書.原渕保明,岸本誠司,吉原俊雄編;2008.
10)口腔咽頭疾患の検査法.日本口腔・咽頭科学会編,東京,金原出版;1997.
11)味覚障害診療の手引き.池田稔編.東京,金原出版;2006.
12)睡眠呼吸障害(いびきと睡眠時無呼吸症候群)診療の手引き.西村忠郎編.東京,金原出版;2006.
13)扁桃病巣疾患診療の手引き.日本口腔・咽頭科学会編. 東京, 協和企画;2023.