2 巻 頭 言 耳鼻咽喉科領域において、口蓋□桃摘出術およびアデノイド切除術は、最も頻度の高い基本的な手術手技の一つであり、小児から成人まで幅広い年齢層に対して施行されている。 近年、小児の閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)をはじめ、生活の質(QOL)に直結する疾患への理解が進む中で、□桃・アデノイド手術の重要性はますます高まっている。一方で、術後出血や□痛といった合併症の問題は依然として解決すべき課題であり、手術対象となる小児の低年齢化が進むなかで、従来の手術手技に比べて、より安全で低侵襲な手術技術の導入が強く求められている。 その中で、パワーデバイスを用いた新たな手術手技が注目を集めている。コブレーター、マイクロデブリッター、バイザクトなどのエネルギーデバイスは、術中術後出血の軽減や術後□痛の緩和に寄与するだけでなく、手術時間の短縮や操作性の面でも優れた特性を持っている。とりわけ、被膜を温存する「被膜内口蓋□桃摘出術(PIT)」や、内視鏡下で行う「鏡視下アデノイド切除術(EPA)」は、術後合併症のリスクを抑えつつ、確実な切除を可能にする術式として、今後の標準手技の一つとなりうると考えられる。 本手引きでは、これらのデバイスの使い分けや術式の選択基準、具体的な手術手技のポイントに加え、術後管理や医療経済的な視点までを含めて、多角的に解説している。初心者にとっては技術習得のガイドとして、また経験豊富な術者にとっても改めて自己の術式を見直す機会として、本書を活用していただきたい。 昨今、診療現場では限られた時間と人的資源の中で、より安全かつ効率的な治療が求められている。本手引きが、そうした臨床の現場において、患者にとっても術者にとっても負担の少ない□桃・アデノイド手術の実現に寄与することを期待している。 最後に、本手引きの作成に尽力されたワーキンググループの諸氏に深く敬意を表するとともに、本書が全国の耳鼻咽喉科医に広く活用され、日常診療の一助となることを心より願うものである。令和 7 年 6 月 日本口腔・咽頭科学会 理事長原 浩貴巻頭言
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