1.総説【背景】 小児の閉塞性睡眠時無呼吸症(Obstructive Sleep Apnea:OSA)に対する手術は、口蓋□桃手術と合わせてアデノイド切除術(Adenoidectomy)を併施する場合が多い。特にアデノイドの生理的な増大がピークに達する 5-6 歳以下の小児においては、OSA の最も大きな原因はアデノイド増殖に伴う鼻呼吸障害であるとも考えられており、アデノイド切除術の有効性は広く認識されている。また、アデノイド切除術は小児の OSA ばかりではなく慢性滲出性中耳炎においても有効な外科治療として、昨今ますますその重要性が高まっている。 従来法の Curette を用いたアデノイド切除術の術後出血頻度は約 0.3%であり、口蓋□桃摘出術(Tonsillectomy:TE)の後出血率 1-4%に比べてリスクは格段に低いものの、術後出血は時に再手術による止血処置が必要となるばかりではなく、稀ではあるが大量出血により生命予後に関わる場合もある。一方で、不明瞭な視野で行う従来法のアデノイド切除術では不十分な切除による再増殖と無呼吸症状の再発などの問題が指摘されている。上咽頭後壁に付着するアデノイドは全容を直接明視下に置くことが困難であり、輪状刀を用いた従来法は半ば盲目的に行われてきた。従来行なわれてきた後鼻鏡と切除刀(La Force 式のアデノトームおよび Beckmann の輪状刀などの Curette)を用いた古典的手術法は、視野が不良であることに加えて切除刀の形状の問題のために、特に鼻腔後端に入り込んだ部分や耳管咽頭口周囲のアデノイド組織の十分な切除が困難であるばかりではなく、耳管□桃の副損傷や、筋層や椎前筋の靭帯露出による思わぬ術中・術後の出血リスクも指摘されている。内鏡視下に従来のアデノイド切除が行われることもあるが、出血により視野を確保することが困難になりやすいなど十分な解決法とはなっていない。 近年、硬性内視鏡下にマイクロデブリッターやコブレーターなどのパワーデバイスを用いたアデノイド切除術(Endscopic Powered Adenoidectomy:EPA)により、従来法よりも安全確実な手術を行うことができるようになってきた。EPA で用いるパワーデバイスは、パワーデバイスを用いた被膜内口蓋□桃切除術(Powered Intracapsular Tonsillotomy:PIT)に用いるものをそのまま使用できるため、口蓋□桃とアデノイドを同時に同じデバイスを用いて施行可能である。これら 2 つの手術を合わせて行う手術は、パワーデバイスによる口蓋□桃摘出・アデノイド切除術(Powered Intracapsular Tonsillectomy and Adenoidectomy:PITA)と呼称される。【鏡視下パワーデバイスによるアデノイド切除術(EPA)とは、どんな手術か?】 鏡視下に出血をコントロールしながら手術が可能である「鏡視下パワーデバイス・アデノイド切除術(EPA)」では、良好な術野を確保することで取り残しを少なくすることが可能である1)。硬性内視鏡を用いる場合には、経口的に 70°の内視鏡を挿入するか、経鼻的に 0°の内視鏡を挿入するのが主流である。用いるパワーデバイスには、マイクロデブリッター、コブレーターなどがあるが、いずれも術中出血をコントロールしながら手術が可能である。 図 1 は硬性内視鏡(70°)視野でのアデノイド切除前後である。良好な術野で周辺組織を損傷することなく、アデノイドが切除されている。Ⅳ 鏡視下パワーデバイスによるアデノイド切除術 (Endscopic Powered Adenoidectomy:EPA) パワーデバイスを用いた口蓋□桃・アデノイド手術の手引き37
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