パワーデバイスを用いた口蓋扁桃・アデノイド手術の手引き
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1,052 例、PIT:1,456 例)の 後方視的研究において術後の早期出血(early bleeding)と摂食障害による脱水症状と、術後長期(平均 フォローアップ期間は平均 8.2 年間、最大 14 年間)の再手術が必要となるような□桃再増殖と□桃周囲膿瘍の形成について検討している。その結果、術後出血率は PIT:0.76%に対して従来型 Tonsillectomy(cTE):2.3%(p = 0.0042、相対危険度:0.3362)であり、再手術が必要となるような再増殖は PIT において若干多いが、その差は□かで有意差はみられなかっ たとしている(p = 0.4073、相対危険度:3.6086)。術後に□桃周囲膿瘍を発症した症例は、PIT:0.14%に対して従来型 Tonsillectomy(cTE):0.10%であり、有意差はみられなかった(p = 0.474、相対危険度:2.1667)。 今後、長期予後に関する研究結果の更なる蓄積が望まれる。【鏡視下パワーデバイス被膜内口蓋□桃摘出術(PIT)の医療経済学的効果】 鏡視下パワーデバイスによる被膜内口蓋□桃摘出術(PIT)では、術後□痛が軽微であるため鎮痛剤投与量の減少と術後早期の食事摂取が可能となる。さらに術後の晩期出血が少ないことから考慮すると、入院期間は本邦における従来型の口蓋□桃摘出術(cTE)より大幅な短縮が可能と考えられる。また、合併症に伴う入院期間の延長や再入院などに必要な医療コストを抑えることができる。さらに、術後出血に起因する窒息や脳死、死亡などの重篤な合併症を有効に抑制できる可能性があり、これらの重篤な合併症にかかる医療費も削減できる。 現在口蓋□桃手術における、本邦の平均在院日数は 7.9 日間(2022 年度 DPC 全国統計)と諸外国と比べて長く、今後短縮化が望まれている。諸外国では医療事情によって、日帰り手術から 3 日間程度までの入院が一般的であるが、本邦では術後出血の危険と痛みによる摂食障害への対策として入院期間を長くしている医療機関が多い。これは多くの耳鼻咽喉科医が従来型の口蓋□桃摘出術(cTE)術後の危険な後出血を身近で経験し、術後出血を極めて警戒していることの現れでもある。実際に、入院期間の短い海外における従来型の口蓋□桃摘出術(cTE)手術後の死亡率は、日帰り手術が一般的となっている米国では、成人で 0.02%(2/10,000 手術症例)、小児で 0.005-0.007%(5-7/100,000 手術症例)とかなり高い死亡率である。一方、本邦では術後の入院経過観察期間が長いことが、術後死を未然に防いでいる可能性がある。今後、入院期間の短縮化を進めるには、より安全な手術術式への変換が望まれる。 PIT では早期の回復、食事摂取が可能であるばかりではなく、術後出血とくに晩期出血(Late bleeding)が極めて稀であることが知られており、入院期間を諸外国に準じて 3 日間程度に減らすことが可能である。この場合、要する入院医療費は、現在の入院 7.9 日間に要する約 400-500 千円 / 件から、入院 3 日間に減らすことができれば、約 230 千円 / 件になり 1 手術症例で約 250 千円の医療費削減効果がある。 本邦における口蓋□桃□桃・アデノイド手術件数は、厚生労働省の 2014 年から 2020 年まで公 開 さ れ て い る NDB オ ー プ ン デ ー タ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/ 0000177182.html)によると、本邦では年間約 4 万 7 千件〜7 万 3 千件の口蓋□桃摘出術、7 千件〜1 万 4 千件のアデノイド切除術が施行されいている。2020 年からの COVID-19 の流行とともに一旦は件数が減少したが、昨今再び増加している。これにかかる入院費用だけで年間おおよそ33,300,000 千円(330 億円)であるから、仮に口蓋□桃□桃手術の半数(約 3 万 5 千件)が PIT 手術に代わることで、入院費のみでも年間約 8,750,000 千円(87.5 億円)の医療費削減効果があると試算される。さらに、術後死亡率は米国などと比べて低いままに、合併症発生時の再入院・再手術 パワーデバイスを用いた口蓋□桃・アデノイド手術の手引き33

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