4.鏡視下パワーデバイスによる被膜内口蓋□桃摘出術(PIT)のエビデンス【術後□痛と術後出血】 鏡視下パワーデバイスによる PIT では使用デバイスにかかわらず、従来の口蓋□桃摘出術と比較し、□痛からの回復が有意に早期であり、通常の食生活への復帰が早い 10-14)。また、術後出血についても、使用するデバイスにかかわらず、術後出血の頻度は有意に低いことが知られている10-14)。・システマティック・レビューから Kim et al., 2017 11)は、PIT と従来型の Tonsillectomy(cTE)を比較対象としたメタアナリシスを行った。この研究には 15 編のランダム化比較試験(RCT)が含まれており、PIT では術後出血の Odds Ratio は 0.44(P = 0.01)であった。PIT を施行した症例において、術後□痛の程度、鎮痛薬の必要性、通常食摂取までの日数、および通常の活動が可能となる日数のいずれにおいても有意な軽減や短縮を認めたと結論づけている。また、PIT においてマイクロデブリッターとコブレーターに術後□痛と術後出血の観点で差は認めなかった。 一方、Blackshowら15)は、1,559 編の論文の中から 22 編の RCT を抽出して、7 つのアウトカム(QOL、術中出血量、術後出血や創感染、脱水などで術後に医療ケアが必要であった頻度、術後□痛、通常の生 活への回復、□桃再増殖による OSA 再発)について検討している。 術中出血量や術後□痛など 5 項目については、PIT を含む Tonsillotomy(TT)と従来型の Tonsillectomy(cTE)との間に明らかな有意差を認めなかったが、・通常の生活への回復と・脱水などで術後に医療ケアが必要であった頻度の 2 項目において Tonsillotomy(TT)が有用であったとしている。Tonsillotomy(TT)では術後の回復が早く、従来型の Tonsillectomy(cTE)よりも約 4 日早く正常生活へ戻ることができ(moderate-certainly evidence)、手術後 1 週間以内の医療ケアが必要であった頻度が、従来型の Tonsillectomy(cTE)では 4.9%であるのに対して Tonsillotomy(TT)では 2.6%と減少した(Risk ratio 1.75:moderate-certainly evidence)。レビューチームは、現在得ることができる比較研究の多くは非 RCT の観察研究で、たとえ RCT であってもバイアスが大きくエビデンスレベルの低い研究がほとんどであり、さらに長期予後についてのデータも不足していると述べている。 このように、エビデンスの不足から現状では、これら 2 つの術式の優劣を明確にすることはできないものの、少なくとも Tonsillotomy(TT)は Tonsillectomy(cTE)より劣る術式であるというエビデンスはなく、むしろより安全で術後回復が早い手術法である可能性を示唆していた。 今後 PIT と従来型の Tonsillectomy(cTE)の優劣をはっきりとするためには、よりハイクオリティな RCT による前向き比較試験が望まれるが、単独もしくは少数の施設で大規模かつ長期にわたるランダム化比較試験を行うことは実際には難しいのが現実である。 一連の「観察研究から得られる非常に一貫したエビデンス」の積み重ねをもって推奨できるかどうかを判定していくことが望まれる。 ・その他のエビデンス Windfuhr らの術後出血について検討したレビュー(2015 年)では、1960 年以後の PIT 施行症例 10499 例(約 60%の症例でマイクロデブリッターが使用されていた)について検討したところ、 術後出血率は全体で 0.26%と低率であったと報告されている。さらに遺残□桃組織の再増殖や術後の□桃炎の頻度、再手術率などは口蓋□桃摘出術と有意差はみられなかった 16)。Zhang らのレビ パワーデバイスを用いた口蓋□桃・アデノイド手術の手引き31
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