血がないままに周囲の筋層や軟口蓋の粘膜を切除してしまい、軟口蓋の変形や鼻咽腔閉鎖機能不全などをきたす可能性がある。視野をきちんと確保したうえで被膜から離れないように確実にシーリングを進めながら切離を進めることが大切である。・シーリング時には□桃把持鉗子の牽引を緩める バイザクトをはじめとするベッセルシーリングデバイスにおいては、□桃組織を強く牽引したままでは十分なシーリングが完了しないことがある。シーリング時には□桃把持鉗子の牽引を緩めることが重要である。・バイザクトは 3mm までの組織をシーリングすることが可能であり、リガシュア(7mm まで)と比べて一度に多くの組織をシールすることはできない。口蓋□桃に分布する血管は主に上行咽頭動脈の分枝であり、解剖学的検討によると上行咽頭動脈の径は起始部において平均 1.54mm (range, 1.1-2.1mm)である。末梢に行くにつれて細くなることから、3mm を超えることは想定されず、十分なシーリング力を発揮できると考えられる3)。・左側口蓋□桃の手術時には、把持鉗子とバイザクトが交差するが、一回の操作で大きくシールするのではなく若干小さめにシールを行うことで被膜から離れることなく剥離が可能である。 右手に把持鉗子、左手でバイザクトを持って手術を行う医師もおり、自身にとって最適な方法を選択することが可能である。【バイザクトによる被膜外口蓋□桃摘出術のエビデンス】 術後出血および□痛への影響オーストラリアの Mao らはバイザクトを用いて行った 1,717 例(成人 658 例、小児 1,059 例)の口蓋□桃摘出術において、早期出血は 1 例 0.1%、晩期出血は 102 例5.9%に認めたと報告している。術後出血のうち止血処置を要したのは 15 例 0.9%であり、大部分は診察時には止まっている、もしくは処置なしの経過観察で止血したものであった。止血処置の内訳としては局所麻酔での止血を要したのは 2 例、全身麻酔での止血を要したのは 12 例、輸血やICU 入室を要したのが 1 例であった 4)。Ni らは 1,384 例の口蓋□桃摘出術において、止血処置を要した術後出血はバイザクトによる口蓋□桃摘出術 444 例中 11 例 2.5%、コブレータによる口蓋□桃摘出術 940 例中 44 例 4.7%において認められたと報告している。止血処置の詳細に関しては記載されていない 5)。【バイザクトによる被膜外口蓋□桃摘出術のデバイス ・コストと医療経済的効果】 口蓋□桃摘出術の保険点数は片側 3,600 点、両側 7,200 点である。3-6 歳では 50%の加算により(3,600 点 × 2) × 1.5 = 10,800 点と増額され、さらに 3 歳未満では 100%の乳幼児加算が追加されることから、(3,600 点 × 2) × 2 = 14,400 点の保険点数となる。 口蓋□桃手術は超音波凝固切開装置加算の対象とならないため、単回使用器具であるバイザクト(定価 48,000 円)の使用に伴い器械コストが増加する。一方、手術に伴う使用物品が大幅に減少すること、直接介助看護師が不要となること、手術時間の短縮による手術室利用効率の上昇が見込めるといった手術そのものに直接関連するコストの削減に加え、術後出血に対応する医師・看護師の人的コスト削減および疲弊の回避、術後鎮痛剤の使用量の減少、平均在院日数の短縮、事故や訴訟 パワーデバイスを用いた口蓋□桃・アデノイド手術の手引き19
元のページ ../index.html#21